公益財団法人 産業雇用安定センター

マッチング事例のご紹介

出向元企業

コロナ禍の困難を、在籍型出向で切りひらく。

スイスポートジャパン株式会社

〒598-0048 大阪府泉佐野市りんくう往来北1 番地 SiS りんくうタワー12F
代 表 者 代表取締役社長CEO 武智 聡
事業内容
旅客業務、オペレーション業務、ランプ業務、貨物業務、整備補助業務、プライベートジェット機業務など、航空機の離発着を支援する空港グランドハンドリング関連事業を、成田・羽田・中部・関西・福岡・那覇の6 空港で提供。

スイスポートジャパン株式会社人事企画部兼人事管理部 部長 宮下竜蔵様
スイスポートジャパン株式会社
人事企画部兼人事管理部 部長 宮下竜蔵様
新型コロナウイルス感染症の影響から、従業員の雇用を守りたい
 当社が在籍型出向の活用を決断したのは、従業員の雇用を守りたいという思いからでした。当社は空港グランドハンドリング事業を主力事業としている企業です。2020年から新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、航空業界全体において需要が縮小しています。当社でもその影響は強く受けており、2020年3月より、多くの従業員に休業してもらっていました。
 雇用調整助成金と会社の資金を拠出し、従業員には休業中も給与を支給しておりましたが、雇用調整助成金はいずれ縮小・終了すると思っていました。また、何より働かずに給与を貰えているという状態が長期間続くことは、従業員のモチベーションに良い影響は与えないと感じていました。
新型コロナウイルス感染症の影響から、従業員の雇用を守りたい
 企業として組織のスリム化は、出来るだけ避けたいと考えていた当社では、様々な制度を活用していました。その中でも今回、特に目立った効果を上げているのが在籍型出向の制度です。
 在籍型出向を実施した結果、大きく三つのメリットがあると感じています。一つ目は雇用についてです。多くの従業員に休業してもらいながらも給与を払い続けていた当社にとって、「ノーワーク・ノーペイ」の基本原則に立ち戻ることが出来たのは、非常に大きいです。二つ目に従業員に対して働く環境を提供できたことです。従業員のモチベーションに繋がったと感じており、従業員からもそのような声を頂いています。三つ目はニューノーマルに向けた変化を経験できたことです。当社では、アフターコロナにおいては、日本のスタンダードが大きく変化するのではないかと考えています。そのように考えたとき、ニューノーマルに向けた変化を先取りし、経験しておくことは、当社と従業員の更なる成長を考えたときに、非常に有効だったと感じています。
在籍型出向成功の陰に光る、従業員目線での事前準備
「従業員の雇用を守る」という目的に対して、在籍型出向は大きな効果を発揮してくれたと感じています。出向後一ヶ月前後では、苦労している様子の従業員も多く見られましたが、二ヶ月目以降は多くの従業員が環境に慣れ始め、「スイスポートジャパンの業務で活かせそうなことを学べた」というような報告を受けることも増えてきました。
 今回当社が在籍型出向でこのような成果を上げることができた背景には、幾つかの要因があると考えています。その中でも最も大きかったことは、事前の丁寧な準備です。例えば、従業員とのコミュニケーションの手段を明確にしていたことが一つ挙げられます。まずは出向先ごとに従業員への説明会と質疑の場を設けました。また、情報収集の窓口となる担当者をアサインするなど、出向した従業員が当社とコミュニケーションを取るための環境と方法を整え、出向と聞いて不安を抱える従業員の視点に立ち、プロセスを整備しました。まだ、課題や改善の余地はありますが、このことによって、従業員の皆様には安心して出向していただけたのではないかと考えています。
 産業雇用安定センター様にサポートしていただけたことも、非常に大きかったです。当社では出向先の企業についても、例えば「既に在籍型出向の活用経験がある企業」など、幾つかの条件を設定していました。従業員に余計なストレスをかけないためにも慎重に出向先を選んでいる中で、産業雇用安定センター様が事前に、「こういう企業に訪問しますが、ご興味はございますか」などと連絡を下さったため、納得して出向先企業を選ぶことができました。また当社のカルチャーや人材を認識された上で、出向先企業をご提案頂けたことも、大きかったと感じています。

出向先企業

在籍型出向で創る、スキルの相乗効果。

株式会社万代

〒577-8543 大阪府東大阪市渋川町3-9-25
代 表 者 代表取締役社長 阿部秀行
事業内容
食料品・住居関連商品・酒類等を販売するスーパーマーケットの経営

株式会社万代 田原本店
株式会社万代 田原本店
株式会社万代 取締役 河野竜一様
株式会社万代 取締役
河野竜一様
需要過多で作業負担に苦悩する
当社は、関西圏を中心に155店舗のスーパーマーケットを展開する企業です。緊急事態宣言発令や外出自粛要請などで、消費行動に変化があり、生活必需品を扱うスーパーマーケットの需要が高まりました。そのような状況下の中で、当社では、従業員の手洗い・ マスクの着用・健康状態の管理はもちろんのこと、お客様の感染症対策を行いながら営業を続けていましたが、従業員の作業負担が大きくなり、接客品質に影響が出てしまう苦悩がありました。
顧客満足度につながる「在籍型出向」
今まで様々な雇用確保の手段を試みてきましたが、当社のような小売店は通常時でも雇用を確保しづらく、折角雇用できたとしてもなかなか定着に至らない現実があります。そんな中で、産業雇用安定センター様にご紹介いただけたのが、在籍型出向制度でした。 この制度を通じて現在、人材を確保し従業員の作業負担を軽減できるだけでなく、企業間の情報を共有することができています。  また当社では大きく二つのメリットを実感していま す。  一つは「足元を見つめ直すこと」です。当社では新しい従業員を受け入れることに伴い、他企業の大切な社員の方を迎え入れる側として自社の環境を見つめ直す良い機会になりました。例えば、従業員一人一人の自分の役割を明確に理解してもらい、新しい成長をし ていけるよう、各店舗での売り場作りを改め、常にお客様の目線に立って接客するよう取り組んでいます。  二つ目は「顧客の満足度」です。出向いただいた方が、これまで当社にはなかった方法でお客様のニーズに対応できるスキルを持っており、このスキルを活用していただくことでお客様の満足度につながることができました。これを受けて当社の従業員が良い刺激を受け、売り場全体を活性化してい ける良いきっかけにもなりました。在籍型出向を活用することで、お客様に満足がいただける「安心・安全」・「高品質」の提供にもつながっています。
相互的なノウハウ活用をする
働きやすい環境を作り出すことができるだけでなく、出向いただいた労働者の方にも当社のノウハウを持って帰っていただけるため、相互のノウハウを共有できる取り組みに今後の可能性を感じます。  産業雇用安定センター様からの紹介は、異業種であってもミスマッチの無いように話し合いを重ねていただけるため、全国155店舗を展開している当社でも、安心して在籍型出向をお願いすることができます。また、状況に応じて双方の企業を訪問し、ヒアリングを実施していただけるため、お互いに納得感を持って在籍型出向制度を利用することができます。当社は、企業間のノウハウを活用しながらアフターコロナのなかでより働きやすい環境を作り、数あるお店の中から選んでいただける企業として活躍するため取り組んでいきたいと考えます。

コンサルタントに聞く

従業員を守りたい、そんな事業主を守るのが在籍型出向です。

産業雇用安定センターは、全国47都道府県事務所にて在籍型出向の支援を展開しています。事例でご紹介したスイスポートジャパン株式会社様を担当した愛知事務所コンサルタント・渡瀬宏幸さんに聞いてみました。

愛知事務所 コンサルタント 渡瀬 宏幸さん
愛知事務所 コンサルタント
渡瀬 宏幸さん
コロナ禍における在籍型出向の支援は、どのようにスタートしましたか。
愛知事務所が本格的に出向支援を始めたのは2020年の夏前です。当事務所の登録企業のうち600社に出向への関心を尋ね、在籍型出向のしくみやメリットを説明させていただきましたし、県内ハローワーク、県経営者協会、商工会議所、信用金庫などの金融機関を訪問し、出向に関心を示してくれそうな企業を紹介いただけないか、協力を仰ぎました。そんな中、2020年7月に中部経済産業局が実施した「出向に関する企業向けアンケート」にご回答された企業102社を足掛かりに、受入案件の情報入手が加速していきました。今年に入って、愛知県労働局が実施した「出向・移籍受入に関するアンケート」に回答した170社についても情報提供をいただきました。
従業員の送出を希望する事業主の方と面談して、いかがでしたか。
在籍型出向の支援をしていく中で感じるのは、事業主の皆さまの「従業員を守る!」という堅い決意です。スイスポートジャパン様を担当させていただいたときも、同社のトップの方が、「厳しい経営環境の中でも雇用維持が最優先」と繰り返されていたのが印象的でした。
在籍型出向を支援するにあたり、留意していたことはありますか。
大きく2つ挙げられます。
1つ目は、受入企業に受入のメリットを確実に訴求すること。特に中小企業では出向制度を取り入れている企業はほぼなかったこともあり、出向制度の内容および受入のメリットは詳しくお話させていただいています。
2つ目は、自分自身の中で固定観念を作らないこと。これまでの出向・移籍では同じ業界内だったり、出向者の職種や経験を尊重してご案内することが多かったのですが、異業種間でも、未経験の職種でも、ご興味を示していただける求人なら、コンサルタントのフィルターを通さずに紹介しようと決めました。スイスポートジャパン様に紹介した出向先は、製造業、ホテル業、タクシー会社など、同社の事業とは異業種の企業です。スイスポートジャパン様からは「バリエーションのある業種・業態の情報をスピーディーに提供いただいた」「従業員は出向先で学んだことを復職後に活かせそう、と言っている」など、うれしいお言葉をいただきました。
在籍型出向のマッチングのポイントは何だとお考えですか。
ロスのない企業間協議を行うこと、それをコンサルタントが“お膳立て”できればと思っています。出向に関する諸条件はいくつもあります。希望職種、希望する人の年齢層、就業時間・残業時間等の就業条件、これらは協議前の大前提としてお伝えしますが、さらに出向期間、出向負担金、残業等の諸手当、通勤費、就業場所、社宅の有無、社宅代、食事代までをも相手の企業様に情報提供しています。やはり受入環境等、就業条件の良し悪しが成立に大きく左右しますね。
最後に、在籍型出向を検討している事業主の方にひとこと。
可能でしたら、出向先の企業見学をおすすめしたいです。自社の従業員がどのような環境で働くのかを事業主や上層部の方には見ておいてほしいと思います。それは受入企業との信頼関係にもつながります。また、悩みや疑問があれば、ぜひとも私たちに相談してほしいと思います。企業経営が非常に厳しい中、従業員を守るために支援を求めていらっしゃる皆様の心境や現状に寄り添う立場として、一緒に歩んでいきたいと思っています。